ウインターカップ転載5-イマケン

  • 2017年12月29日(金)

もうひとつ。
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理屈を凌駕した3年生の意地


この試合は、きっと後世にも語り継がれていくに違いない。安城学園(愛知)と大阪桐蔭(大阪)の女子決勝戦は、それほどまでに壮絶なゲームとなった。

準々決勝で第1シードの岐阜女子を下した安城学園と、準決勝で第2シードの桜花学園を下した大阪桐蔭。それぞれ夏の結果から見れば、今大会では格上の相手を倒し、勢いに乗って初めての決勝の舞台へと足を踏み入れた。

試合は互角の立ち上がりだったが、徐々にペースを掴んだのは安城学園。特に、準決勝まで平均29得点以上を稼いでいた大阪桐蔭のエースN竹原 レイラ選手を、ボックスワンやゾーンプレス、マンツーマンディフェンスを駆使してよく抑え、「前半、(竹原選手を)3得点に抑えることができたのは上出来。ディフェンスは上手くいっていました」と、安城学園の金子 寛治コーチも振り返る。

オフェンスでもG千葉 暁絵選手やL野口 さくら選手が大阪桐蔭のゾーンディフェンスを崩しながら得点を重ね、55-45と安城学園の10点リードで第3ピリオドを終えた。

しかし第4ピリオド、ここから大阪桐蔭が息を吹き返す。F小田垣 李奈選手のバスケットカウントを皮切りに、E鈴木 妃乃選手の3Pシュートなどで追いつき、66-66でオーバータイムに突入した。

その延長戦も、互いに3Pシュートを決め合う白熱した展開が続き、残り15秒で大阪桐蔭のキャプテンC永田選手が逆転3Pシュートを決めたが、最後はこぼれ球から安城学園I深津 彩生選手が冷静にゴール下シュートを決め、ダブルオーバータイムへともつれることに。

すると、この再々延長、残り2分半で大阪桐蔭は大黒柱の竹原選手が5ファウルで退場。このフリースローを安城学園の千葉選手がきっちり2本沈め、4点リードに成功した。

だが、またしても大阪桐蔭は鈴木選手の3Pシュートや永井選手のオフェンスリバウンドで粘って同点に追いつき、残り6秒、ドライブを仕掛けた鈴木選手に、安城学園のディフェンスが一斉に寄ったところで、鈴木選手からパスが渡ってQ小林 明生選手が得点。

一方の安城学園は、最後のオフェンスを2年生エースの野口選手に託すも、攻め切れなかった。86-84で、大阪桐蔭が50分間の再々延長に及んだ激闘の終止符を打った。

試合後、「第3ピリオドの途中で10点以上はリードしていたんですよね。なんで追いつかれたのか……帰ってビデオを見直さないと」と、金子コーチはやや放心状態。

確かに、安城学園の策は確実に大阪桐蔭を苦しめていた。特に、エースの竹原選手が徹底して守られ、最後まで調子が上がらなかったことに関して「インターハイの岐阜女子戦を思い出し、本当に嫌な雰囲気でした」と大阪桐蔭・森田 久鶴コーチも振り返る。

それでも、大阪桐蔭が驚異の粘りを見せて勝利を掴み取った要因は、セオリーや理屈を凌駕したところにあったのかもしれない。

「気持ちを出して、自分を信じてシュートを打ちました」という鈴木選手をはじめ、たとえシュートセレクションが悪くともアウトサイドのシュートを決め続け、身を呈してリバウンドに飛び込んだ3年生たちの意地は見事だった。

大阪桐蔭の今年の3年生たちは、エースの竹原選手を筆頭に、下級生の頃から試合経験を積み、多くの敗戦を味わってきた学年。いよいよ迎えた勝負の年に、集大成となるこの舞台で、これまでの悔しい経験や努力が花開く形となったのだ。

「鈴木をはじめ、永井のドライブだとか、小田垣のドライブ、大事なところでの永田の3Pシュート…今まで竹原を支えてくれた、周りの3年生の力だったかなと思います。本当にこの初優勝は、チーム全体で勝ち取った勝利です」と、森田コーチは笑顔で選手たちを称えていた。
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ダブル延長戦。確かに歴史に残る試合でしょう。

ウインターカップ転載4-イマケン

  • 2017年12月29日(金)

今日も勝手に転載です。
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和してなお輝く

アメリカンフットボールの名コーチがこんなことを言っていた。
「私は11人のベストな選手とではなく、11人でベストになるチームでプレイしている」

いくら才能豊かなタレントを多く揃えようとも、それがチームとして機能しなければ、宝の持ち腐れである。いや、宝のひとつひとつは輝くかもしれないが、その価値は個別に売却したコミックと同じである。全巻一揃えししたものに比べると、その価値は単品以上のそれにはならない。

男子準々決勝、明成(高校総体2位)に、67-84で敗れた県立広島皆実(広島)は5人でベストになるチームを作って、戦ってきた。男子U16日本代表候補のI三谷 桂司朗選手もいるが、彼の力だけで勝ち上がってきたわけではない。むろん下級生のころから主力としてチームを引っ張ってきた4人の3年生の力だけでもない。誰かひとりの才能に頼っていたら、県立広島皆実はメインコートに立つことさえできなかっただろう。

「(かつては)私のなかにも地方だからとか、公立だからという言い訳があったと思うんです。でも今は、確かに私立とは環境が違いますけど、地元の選手を丁寧に磨いていけば戦えるんだと、今大会で証明できたと思います。チーム作りとしては、選手たちに答えを与えるのではなく、彼らに考えさせるようにして、それに僕が味をつけていくことで、随所で彼らが判断する要素になったかなと思います。部活動や日常生活のなかで種を蒔いていって、あとは方向づけをしてやっていくと主体的な選手になってくれるのかなと」

選手育成、チーム作りの根幹を県立広島皆実の藤井 貴康コーチはそう語る。

公立高校は、全国から有望な選手をリクルートできる私立高校と異なり、原則的に所在地の都道府県内の高校生で形成される。むろん私立高校には私立高校の難しさもあるのだが、長身の留学生など、自分が考えるバスケットボールスタイルに合った選手を求めることはできない。県立広島皆実もまた、そんな公立高校のひとつである。

昨年のウインターカップではメインコートの一歩手前で優勝した福岡第一(福岡)に敗れたが、今年は高校総体でベスト8、今大会もきっちりと勝ち上がってきた。

キャプテンのC原未 来斗選手は今年のチームの強さについて、「今までと違うのは全員が縦も横も関係なく、練習中から競争し合って、コミュニケーションを取り合って、メンバーに入っていない多くの選手たちもチームが勝つために戦った必死さが一番の強みかなと思います」と言及する。

愛媛国体は中国ブロック予選で敗れて出場することができなかった。しかしその悔しさがあったからこそ、基礎から見直し、夏よりもさらに強くなって今大会に戻ってくることができた。

高校総体越えを目指した今大会の準々決勝では、明成を相手に素早いトランジションで粘り強く戦い、前半は5点のビハインドに止めている。しかし後半になると、攻守のギアを一段階上げた明成についていけず、その壁を乗り越えることはできなかった。

「前半から自分たちの持ち味である速い展開のバスケットができたのですが、一試合を通して相手のインサイドを守りきれなかったことがこの差になったのかなと思います」
原選手は敗因をそう語る。

それでも、同じくベスト8の県立厚木東とともに、古くからの名門校ではない、普通の公立高校がメインコートにまで勝ち上がったことは県立広島皆実の選手にとって、大きな財産になるはずだ。

「皆実に入学したときから、この舞台でバスケットをすることを目標にやってきて、ようやく立つことができました。負けてはしまったんですけど、40分間、皆実らしい、背の小さいチームでも頑張れることを見せることができたかなと思います」

メインコートの感想を胸を張って話す原選手だからこそ、三谷選手ら後を引き継ぐ後輩たちへのエールも忘れない。
「来年は、主力でやってきた自分たち3年生が抜けて戦力は多少下がるかもしれませんが、三谷桂司朗や山口由稀が残るので、彼らを中心にしっかりとチームを作って、今度はメインコートで勝ってほしいと思います」

私立だとか、公立だとか、そんな区別は必要ないのかもしれない。
大切なのはチームに集う選手それぞれがそれぞれの力を信じ、磨き合い、余すことなくその力を出しきることだ。そうすればおのずと個の力はチームの力へと昇華していく。

もう追いつけない。そうわかる時間になっても、彼らは最後まで自分たちのバスケットボールを貫いた。5人でベストになるチームを築いてきた県立広島皆実は、和してなお輝くチームだった。
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地方でも、公立でも、背が小さくても、ここまで来れる。

ウインターカップ転載3-イマケン

  • 2017年12月27日(水)

今日の転載記事です。
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考えるエースの正しかった選択


試合終了のブザーが鳴ったとき、北陸学院(石川)のA大倉 颯太選手は、頷きながら仲間たちとハイタッチをかわして健闘をたたえ合っていた。

男子3回戦、福岡大学附属大濠(福岡)に70-76で敗北。あと一歩及ばなかったが、粘り強く食らいつき、インターハイ王者を最後まで苦しめた。「実力差があったとはいえ、3年生も1・2年生も、ベンチも含めて40分間しっかり戦い抜けたと思います」と、大倉選手はチームメイトを称える。

大倉選手自身は、37得点・14リバウンド。第3ピリオドだけで16得点を稼いだが、第4ピリオドでは5得点と失速してしまった。

#77森島 瑞樹選手のファウルトラブルにより、大倉選手が2-3のゾーンディフェンスでゴール下を守らざるを得ず、インサイドでのぶつかり合いがボディブローのように効いていたのかもしれない。

「試合中なので足の疲労は気にしていませんでしたが、頭が真っ白になったときがありました。普段はそんなことはあまりないんですが…身体的疲労もあったのかなと思います」。それでも、エースとして最後まで攻め続ける姿勢を貫き、高校でのラストゲームを締めくくった。

そんな大倉選手は、もともと中学時代にジュニアオールスターで準優勝、全国中学校バスケットボール大会で優勝と、全国トップクラスで活躍してその名を知られていた選手。その高い身体能力と華やかなプレイは同世代の中でも群を抜いており、当然、全国各地の高校から多くのオファーがあった。だが、大倉選手が進学先に選んだのは、2つ年上の兄が通う創部まもない北陸学院だった。

「石川県のチームでも日本一になれることを全国に見せよう」(濱屋 史篤コーチ)と、ミニバスの頃から知っている仲間たちとともに、地元で日本一を目指すことにしたのである。

大倉選手たちは、北陸学院の3期生に当たる。入学した1年目、1期生が3年生のときにウインターカップ初出場を果たし、昨年の2期生の代では一気にウインターカップ3位に。今年はその記録を塗り替えることはできなかったが、昨年に増して小柄になった今年のチームで、大型チームの福岡大学附属大濠に互角の戦いを見せたことは見事だった。最後の冬に、大きな爪痕を残したと言えるだろう。

そしてチームの飛躍とともに、大倉選手自身も3年間で大きな成長を遂げた。もともとアウトサイドのプレイが得意だった大倉選手だが、濱屋コーチは「インサイドをなるべくやらせたいという思いがありました。まず中をやらせて、それから外。動けて大きい選手は外のプレイばかりやりたがる傾向にありますが、そうではなく、どのポジションでも戦える選手にしたいな、という思いで3年間やってきました」という方針で指導してきた。

「彼(大倉選手)からすれば、3年間、その年その年で役割もポジションも変わって、やりにくい部分があったと思います。でもそこを理解して、ついてきてくれました」と濱屋コーチ。こうして大倉選手は、アウトサイドに頼らず、状況に応じてポストアップなどインサイドでも得点できる“真のオールラウンダー”へと変貌を遂げたのだ。「毎年本当に苦しかったですけど、どこのチームの誰よりも、心も体も大きくなった自信はあります」と、大倉選手も自身の成長を振り返る。

また、その成長を加速させたのが、その高いバスケットIQだ。大倉選手の良さは、高い身体能力やテクニックだけでなく、バスケットに対して貪欲に勉強や試行錯誤を重ね、明確な自分の意見を持っている面にもあった。

「北陸学院は“習うだけのバスケット”ではなく、選手からの意見もあって、コーチと一緒にやっていくのが強みだと思っています。コーチが勉強している分、自分たちもそれに対応できるようにしてきましたし、自分たちも勉強しながら自分たちの戦い方を探し求めてきた。それが北陸学院らしいバスケットです」と大倉選手。歴史の浅いチームだったからこそ、自分たちでチームカラーを築き上げ、自分自身もステップアップしてきたのである。

大倉選手は、「長いようで短かったですけど、3年間はすごく濃いものでした。波もあったし怪我もして。いろんなプレイヤーからたくさん学ぶこともできました。自分の目標に向けての大きな一歩になったと思います」と高校3年間を振り返った。求めていた結果は出なかったかもしれないが、あのとき北陸学院を選んだこと、そしてこれまでの道のりは間違いではなかった――大倉選手の顔は、そんな充足感で満たされていた。
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「オールラウンダー」、「貪欲に勉強と試行錯誤」という言葉が心に残りました。

ウインターカップ転載2-イマケン

  • 2017年12月24日(日)

転載その2です。
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“不完全燃焼”を燃え尽くして

県立郡山商業(福島)の3年生たちにとって、この3年間は酸いも甘いも味わってきた3年間だった。もともと彼女たちは、お互いにミニバスや中学時代から顔見知りで、2017年に地元の福島県で開催される南東北インターハイを見据えて県立郡山商業に入学してきた選手たち。下級生の頃から主力として活躍し、長く県内のライバル・県立福島西の壁を越えられずにいたが、昨年ついに2年生主体でウインターカップに出場。そして今年、3年ぶりとなるインターハイ出場を手にした。

インターハイ前に行われた東北大会では、チームの代名詞とも言える“泥臭さ”を発揮して聖和学園(宮城)を下し、悲願の初優勝。来たる地元インターハイに向けて、これ以上ない形で弾みをつけた。

ところが、迎えた地元インターハイ、チームをアクシデントが襲う。1回戦の奈良文化戦で、キャプテンのC佐藤 由佳選手が腰を負傷。続く2回戦、ケガを押して出場したが本調子とは言えず、61-67で富士学苑に敗れた。試合後、2大エースとして佐藤選手とともにチームを引っ張るF須藤 郁帆選手は、「キャプテンの穴を埋め切れなかったです」と悔し涙を流した。

こうして、不完全燃焼で終わってしまった“勝負の夏”。だからこそ県立郡山商業は、このウインターカップ2017での雪辱に燃えていた。大会前には、佐藤選手らが手作りのカウントダウンカレンダーをサプライズで作って部室の扉に貼り、大会までの一日一日を大切にしながら、練習に取り組んできたと言う。

そのウインターカップ初日は、県立新居浜商業(愛媛)に83−59で快勝して1回戦を突破。そして2回戦、180cmのオールラウンダーC奥山 理々嘉︎選手を擁し、全国屈指のオフェンス能力を誇る東京・八雲学園と対戦することになった。

序盤は、点の取り合いについていった県立郡山商業。だが、「シュートの精度は想像以上でした。シュートチェックのあと一歩が詰められなかった」と松本 理コーチ。得意のオールコートプレスも「第1ピリオドを終えて予想以上に選手たちが疲弊していたので、少し我慢することになりました」と繰り出すことができず、じわじわとリードを広げられてしまう。前半を終えて34−47。第3ピリオドには20点以上の差をつけられ、勝負はほぼ決してしまった。

だが、県立郡山商業の選手たちは、ここから開き直ったかのようにアグレッシブにゴールへ向かった。オールコートプレスで相手のミスを誘い、速い展開から次々とゴールを奪う。第4ピリオドの残り8分、須藤選手が5ファウルで退場となったが、集中を切らさず、「先生から『最後の意地を見せろ』と言われて、3年間やってきたことを出し切ろうと思いました」という佐藤キャプテンを中心に攻める姿勢を貫いた。そんな姿を見て、松本 理コーチも「試合中に涙が出たのは今までの指導歴の中で初めてです」と、ベンチで思わず目頭を熱くしたと言う。

最後は73−96で試合終了。結果的には夏と同じ2回戦敗退となったが、数字には残らない“東北の粘り”を、十分に披露したゲームだった。佐藤選手はこれまでの濃密な日々を振り返って、こう話す。
「苦しいことも多かったけど、楽しいことも多かったです。今年一年、部員24人でグンショー(郡山商業)のバスケットをやってこられたことは一生の宝物ですし、24人を率いてくれた松本先生には感謝の気持ちでいっぱいです。プレイだけでなく、精神的にも人間的にも成長できた3年間でした」

その顔は、不完全燃焼に終わった夏とは大きく違って、すべてを出し尽くしたような晴れやかな表情だった。
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「泥臭く」という言葉に反応してしまうイマケン。ベアーズは、泥臭く戦う。

ウインターカップ転載1-イマケン

  • 2017年12月24日(日)

ご無沙汰しています。
イマケンです。
ウインターカップが始まりました。
この試合、イマケンは「現場レポート」が好きで、ウォッチし、気に入った記事を勝手に転載させていただいています。
今年も、転載します。
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リベンジへ 〜3年生が見せた意地のラストショット〜

例えば、見通しのよい一本道。数十メートルおきにある信号を見ると、先はすべて青信号。ノンストップで進める。
しかしすぐ目の前にある信号が赤であれば、その先はどうあれ進むことはできない。
トーナメント形式の大会とはそんなものなのかもしれない。まずは目の前のゲームをいかに勝つかが重要になる。

ウインターカップ2017の女子1回戦、精華女子(福岡)と県立足羽(福井)の対戦は81-80で精華女子が競り勝った。

ともに女子U16日本代表の一員として、FIBA U16 Asian選手権大会2017で準優勝を遂げたM三浦 舞華選手(精華女子 1年)とI林 未紗選手(県立足羽 2年)がいる。ふたりのマッチアップはこの試合の見所の一つだったが、ゲームを決めたのは精華女子の3年生、E清水 利祐子だった。

「清水のミドルシュートは我々のハーフコートオフェンスの中心。最後はよく決めたくれました」
チームを率いる大上 晴司コーチは彼女のラストショットをそう振り返る。

本来であれば、インサイドでコンビを組む1年生センターのN木村 瑞希選手がダイブをすることで空くスペースに走り込み、そこからのジャンプショットを打つのが得意なパターンだ。この試合も序盤はそうして得点を重ねていた。

しかしそのN木村選手がファウルアウトし、そのパターンが消されたとき、それまで好調だったE清水選手のシュートに微妙な誤差が生じ始めた。決まらない時間帯が続いたのだ。

並の選手であれば、そこで打つのをやめて、チームメートに活路を見出だしても決しておかしくはない。
それでもE清水選手は打ち続けた。外れても外れても打ち続けて、最後の最後に決勝のゴールを沈めた。

「大阪桐蔭と2回戦で当たることがわかってから、インターハイのリベンジをすることだけを考えてきました。そのためにも一回戦の県立足羽戦を100%の力で戦おうと昨日まで準備をしてきました。苦しいときもあったけど、勝つために鍛えてきたので、それを一人ひとりができたからこそ勝てたのだと思います」
E清水選手は激闘の県立足羽戦をそう振り返る。

そして自身のラストショットについては、「今大会は自信を持って打ち続けることだけを考えています。練習でリバウンドを拾ってくれる後輩たちがいるから自分はシュート練習ができています。最後も自信を持って打ちました。あれは意地ですね」と胸を張る。
ラストショットは自らを信じる者にのみ成果をもたらすということか。

県立足羽の林 慎一郎コーチが「6番の子(清水)のシュートがあそこまで入るとは……彼女のシュートは誤算でした」と言えば、女子U16日本代表でキャプテンを務めたI林選手は、「3年生の意地を見せつけられました。私たちは2年生主体で、そこに3年生のキャプテンが一人いるチーム。精華女子の3年生が出てきたときに、私たちは何もできませんでした」と振り返る。

いや、県立足羽も最後に3年生の意地を見せようとはしていた。しかしそこに至る経緯でI林選手が痛恨のミスを犯し、それを見せることができなかった。これは2年生のI林選手にとって、最上級生となる来年にきっとつながるはずだ。

真の日本一を決めるウインターカップは才能豊かなルーキーたちだけで勝つことはできない。

精華女子でいえば、1年生のM三浦選手やK樋口 鈴乃選手に注目が集まりがちだが、E清水選手をはじめ、キャプテンのC梶原 志保選手や、シックスマンとしての力を発揮するF石丸 雪乃選手らがいるからこそ、N三浦選手ら下級生も生きてくるのだ。

清水は言う。
「1、2年生が頑張ってくれるので、私たちは彼女たちを支えながら、コートでは5人全員で戦います」

3年生が意地を見せることで、文字どおりチーム一丸となって初戦を突破した精華女子。

一つ目の信号は青になった。二つ目の信号は、夏に行く手を阻まれた大阪桐蔭である。赤信号のあとに灯るのは何か。青信号である。
さぁ、堂々とリベンジに立ち向かおう。
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ひとりだけでバスケはできない。支える他のメンバー、そしてスタッフ、保護者、様々な人の総合力だ。

補足−柿内君のこと-イマケン

  • 2017年11月18日(土)

中央大学主将・柿内君のことを書きましたが、入学直後の懐かしい記事を思い出し、再度掲載させていただきます。

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京王電鉄杯  2014年5月10日

「さのっちボイス」に、「中央大学対東京大学」というのが出ていましたが、これが「第30回京王電鉄杯」という大学生の大会での話題です。

京王電鉄沿線の10大学による大会で、関東大学リーグ1部・2部の強豪チーム(東京大学は4部。昔は強い時代もあったようですが。)が出場するので、今年の公式戦を占うような意味合いで結構注目度が高いようです。

中央大学は、昨年の関東リーグ2部3位です。トップ10である1部にもう少しで入れる位置にいます。このチームにこの春、K君が入りました。

彼は、熊本県出身でミニバス時代はトライアンフと一緒に練習や試合をしました。小学校卒業時に全九州ジュニアクラブチーム交歓大会に、ベアーズの一員として出たことがありましたが、彼が入っただけで、ベアーズがものすごくいいチームに見えました。ガードとしての彼の能力がすぐれていたので、メンバーのプレーをうまく引き出したのです。

そして、福岡のバスケ強豪中学に入り、高校は北陸の強豪チームでキャプテンを務め、ユースの日本代表にも選ばれ、前途有望な青年です。

対する東京大学は、もちろんショータが主将として率いる4部8位(4部の上位3分の1あたり)のチーム。

その両チームの対戦を、K君のお父さんが観戦されていたそうです。

1年生ながらK君はスタメンでフル出場だったようで、さすがです。

そして、東大を見ると、一人頑張っている選手がいる。気になってパンフレットを見ると熊本高出身で主将となっている。これはひょっとしてベアーズ出身者ではないかと思い、さのっちさんに連絡されたということを、妻から聞きました。

こういう形でK君やショータの消息を聞くとは、不思議な「縁」というものを感じます。

ということで、「第30回京王電鉄杯」の結果を久しぶりに「大会情報」に書き込みましたから、のぞいて見てください。

ちなみに東大は10位(最下位)ですが、大差での敗戦の中、1試合だけ同点で終わった試合があったのが救いでしょうか。(東京大学71vs71法政大学)

【京王電鉄杯最終結果】
優勝  青山学院大学
準優勝 早稲田大学
3位  明治大学
4位  拓殖大学
5位  専修大学
6位  中央大学
7位  慶應義塾大学
8位  法政大学
9位  日本大学
10位  東京大学

インカレ-イマケン

  • 2017年11月18日(土)

大学バスケの日本一を決めるインカレが、男子は11月20日から、女子は11月28日から始まります。

その中に、トライアンフ、ベアーズと縁のある選手が出ます。

男子は今年の関東学生リーグで2部1位となって1部リーグ昇格(1部11位)を決めた中央大学を率いる、主将・柿内君。中学から福岡に行ってしまいましたが、小学生のときは、たびたびトライアンフと練習や試合をしていました。

女子は、ベアーズOGの奥村さん。熊商から今年、日体大に進学し、1年生ながらベンチ入り。関東リーグでは1部リーグ8位でした。結果を見たら、14試合中、2試合に出場し、プレイ時間合計7分余り。インカレではコートに立てるか微妙ですが、1年生からインカレのベンチに入るだけでもすごい。

2人とも頑張ってほしいですね。

なお、九州リーグ代表として男子1位、女子3位で東海大九州が出場。こっちも頑張ってほしい。

トライアンフの名前の由来-イマケン

  • 2017年07月01日(土)

ご無沙汰しています。イマケンです。

このたび、大牟田から長崎に転勤になりました。(引っ越しは7月3日です。)引き続きごひいきに願います。

さて、さのっちさんから、多分ベアーズのメンバーに、「ベアーズの由来」というメールが来て、要は「熊本」の熊の英語「ベア」、そして英語のベアは「耐える」という意味があり、厳しい練習に耐えるというところから来ている、ざっとこんな趣旨であったかと思います。

そこで、イマケンが、「トライアンフ」の由来を少し解説しておきましょう。多分、そのうち誰もわからなくなるでしょうから。

まず、英語の「TRIUMPH」の意味はというと、「勝利、征服、大成功」などです。勝利というとVICTORYというのもありますが、これよりも、もっとダイナミックな「大勝利」という感じでしょうか。

で、この「トライアンフ」は、トライアンフスクールの代表・Iさんが高校時代に所属していた高校の確か水泳部の愛称であった。それをそのまま、スクールの名前に使ったということであった、ということでありました。どんなスポーツでも似合う良い名前ですから。

次に、「TRIUMPH」の語源です。
「tri」は「3」であり(たとえばトライアングル)、「ph」は声であり、三度勝どきの声を上げる(日本なら、エイエイオー!×3)から来ているらしいと、昔、書きました。

しかし、最近の状況を見ると、語源は「酒神バッカスにささげる歌」だという話しが出ています。

ま、どっちにせよ、勝どきを上げたり、歌を歌うほどの大勝利であったのです。

さらに、最近、「トリンプ」(TRIUMPH)という下着メーカーがありますが、本来は「トライアンフ」と呼びたいが、字とのバランスで読みにくいから、日本だけ、そういう呼び方をしているということです

イマケン、チームに関わった保護者として、チームの名に恥じない頑張りを期待します。

高校野球で0ー91 元不登校投手「1つのアウト格別」-イマケン

  • 2017年04月01日(土)

ご無沙汰しています。バスケではありませんが、いい話が載っていたので、引用させていただきます。

朝日新聞デジタル(http://www.asahi.com/articles/ASK3071PBK30ONFB00X.html?iref=comtop_8_02)の記事です。

 「選手はダメじゃない」。春季高校野球三重県大会で、「0―91」の5回コールドで敗れた英心(伊勢市)の監督の言葉が反響を呼んでいる。「果てしなく遠く感じた」というアウト。12個をつかみとった選手たちに、多くの応援の声が寄せられた。

 3月27日の伊勢球場。南勢地区1次予選で、創部2年目の英心は、甲子園出場経験のある宇治山田商と対戦した。8、31、41、11。スコアボードの相手の得点欄に並んだ数字の合計は91。4本塁打を含む62安打を浴び、失策も17あった。

 「すごい打線だった。甘い球は全部もっていかれた」とエースの松本周君(2年)。4回、269球を投げ抜いた。「アウトが果てしなく遠く感じた。でも、その一つひとつが格別だった」とも話した。

 英心は全校生徒の半数以上が「元不登校」の私立校。9人の野球部員にも数人おり、松本君もその1人だ。中学時代、突然怖くなって3年間学校に行けなかったという。野球は未経験だったが、高校で豊田毅監督(31)に誘われて入部した。初めは練習への参加も途切れ途切れ。それでも、「久しぶりに勝負事を全力でやってみたくなった」とのめり込むようになった。

 3月27日は大敗したが、「投球を楽しめている気持ちもあった」。助っ人の部員が守るライトに飛んだ飛球を、センターの谷口陽一主将(2年)が走りこんで捕球した好プレー。大きな声を出して守ってくれている仲間。「全員で12個のアウトをつかみとった」と話す松本君も、空振り三振を一つ奪った。四回にみぞおちに打球を受けても、「投げさせて下さい」と続投した。棄権も覚悟したという豊田監督は「野球を始めた頃は、人に対してびくびくしていたが、あんな目は初めて見た」と喜ぶ。

 「弱いのに大会に出るな」と批判されたこともあったという。でも、豊田監督は出場して良かったと感じている。試合後、選手が2時間9分の試合に全力を尽くしたことを伝えようと、ツイッターでつぶやいた。「春大会の日本記録かも知れません。でも最後まで点を取りにきていただいたのがうれしかった。選手はダメじゃないです」。投稿は瞬く間に広がり、「目標に向かって頑張る姿勢は素晴らしい」「最後まで続けた生徒たちに感激です」など、続々と応援コメントが寄せられた。豊田監督は「強い弱いだけが野球じゃない」と改めて思ったという。

 三重県高野連の記録では、2007年、夏の選手権三重大会2回戦で記録された「53―0」の試合が最多得点差。高野連の関係者は「県内の地区予選の記録すべてを把握しているわけではないが、今回ほどの大差は聞いたことがない」と話す。

 英心は練習試合も含めて約30試合で未勝利。谷口主将は「勝ったらチームや気持ちがどう変わるんだろう。その答えを知りたい」と話す。

 大阪桐蔭が選抜大会で優勝した1日、英心は地区大会で2―37で5回コールド負けした。だが、公式戦で初めての得点。初勝利にほんの少し近づいた。

(田中翔人)

ウインターカップ現地レポートから(8)-イマケン

  • 2016年12月27日(火)

今回、「オールラウンド」という、言葉がひっかかりました。

その事例をふたつご紹介します。

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「ある名将のラストクリスマス」

ウインターカップのみならず、高校バスケットボール界を沸かした名将が、2016年のクリスマスを最後にその舞台から静かに降りる

来年3月に定年を迎える女子の山形市立商業の高橋 仁コーチにとって、JX-ENEOSウインターカップ2016はコーチとして最後の全国大会だった。

1回戦、2回戦を突破し、迎えた3回戦の相手は、これまでお世話になってきた井上 眞一コーチ率いる桜花学園。言わずと知れた高校女子バスケットボール界をリードする高校だ。

今年で就任28年目を迎える高橋コーチだが、それ以前は中学校の教師をしていた。当初は男子バスケットボール部を率いていたが、その後、女子バスケットボール部の顧問になったときに「日本一のチームとはどういうチームなのだろう!?」と、井上 眞一コーチに手紙を送り、1週間寝泊りをさせてもらいながら、その神髄を学んだという。

「その井上さんと最後のゲームになったのは何かの縁かな。井上さんからはたくさんのことを学びましたよ。特にディフェンスの厳しさや、ファンダメンタルの大切さ、そして厳しい練習の中で選手が自立するチーム作り。井上さんは指導者として大きな影響を与えてくれた人です」

そこから愛知学泉大学の木村 功コーチを紹介され、当時の共同石油(現:JX-ENEOSサンフラワーズ)を指揮していた中村 和雄氏、長崎・鶴鳴女子(現・鶴鳴学園長崎女子)の山崎 純男コーチなど、あらゆるカテゴリーの日本一のコーチたちと交わり、バスケットボールのコーチングを深めていった。

それでもすぐに結果が出たわけではない。むしろ高校バスケットボール界で山形市立商業の名前が出始めたのは、ここ10年くらいである。
それは周囲から「山形市立商業には独自の色がない」と言われたことがきっかけだった。それまで井上コーチをはじめ、日本一を知るコーチの真似をしていた高橋コーチだったが、ふと立ち止まり、考えた。どうすれば山形県にいる子どもたちに合ったバスケットボールができるのだろうか、と。辿りついたのが、170cmから180cmに満たない選手たちをオールラウンドにプレイさせる、現在の山形市立商業のバスケットの根幹となるスタイルだ。

果たして、大沼 美咲さん(元デンソーアイリス)を中心としたチームで第38回大会(2007年)、第39回大会(2008年)の銅メダルを獲得すると、第42回大会(2011年)には妹の大沼 美琴選手(現:JX-ENEOSサンフラワーズ)を擁したチームでの準優勝へと結実する。

さらに活躍は山形市立商業だけに留まらず、今年度は女子U-18日本代表チームのヘッドコーチとして、11月のFIBA ASIA U-18選手権でチームを準優勝に導いた。

(中略)

日本一にはなれなかったが、チームディフェンスで桜花学園の攻撃を狂わせ、オフェンスでは175cmのE小鷹 実春選手が3Pシュートを決めるなど、オールラウンドにプレイする山形市立商業のバスケットスタイルは、間違いなく多くのファンの心に残り、日本中の多くの指導者が参考にできるところだろう。
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「陸上部には負けていられない」

女子3回戦が行われた12月25日(日)、つまり大阪薫英女学院(大阪)がウインターカップ2016のベスト8進出を決めたその日に、同校の陸上部が都大路を駆け抜け、全国高校駅伝を制した。2年ぶり2度目の栄冠である。折しもバスケット部も全国大会の真っ最中。同じ運動部としては刺激を受けないわけがない。キャプテンのC金田 愛奈選手が言う。
「陸上部の子たちとは3年間同じクラスだったんです。だから優勝を聞いたときはすごいなと思ったし、同じ学校のクラスメイトとして嬉しい反面、運動部で競い合っている立場でいえば、自分たちも負けていられないなって思いました」

だがバスケットボール部が同じように全国制覇を果たすためには、越えなければならない大きな壁がある。高校総体、国体を制し、「高校3冠」に王手をかけている女王・桜花学園だ。16年ぶりの決勝進出をかけて戦う、準決勝の対戦相手である。

結論から言えば、大阪薫英女学院は57-81で敗れ、その壁を越えられなかった。
「前半がすべてでしたね」と安藤 香織コーチが言うように、序盤から桜花学園のディフェンスに押し上げられ、練習してきたことができない。むしろ「国民体育大会が終わった後、しっかりと走りきってからボールを受ける練習をしていたのに、みんながボールへ、ボールへと意識して動いていたので、余計に桜花学園はディナイがしやすかった」とC金田選手が振り返るように、ボールが動かず、人も動かず、得点を積み上げられない。前半を終えた時点での23点ビハインドは、桜花学園を相手にすると致命的でもあった。

しかし後半、スタメンの平均身長が170cmを超えるオールラウンダー集団は開き直った。攻守においてアグレッシブさを取り戻し、最大25点まで開いた得点差を13点差に縮める場面もあったが、最後は桜花学園に押し切られてしまった。

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熊本では長身でも全国には通用しない。長身でもオールラウンダーにならなければならない!