第4弾です。
http://wintercup2016.japanbasketball.jp/column/07
「初出場は走り合いの真っ向勝負!」
秋田県立平成高校――。ウインターカップ初出場ながら、この校名にピンときた高校バスケファンもいるだろう。
全国大会で58回の優勝を誇る名門・県立能代工業が、インターハイは48年ぶり、ウインターカップは46年ぶりに出場を逃したことが話題になった今年、代わりに全国への切符を掴んだのが県立平成だった。
横手市にある県立平成は、在校生徒300名程度の小さな公立校。もともと全く強豪ではないところから、県立能代工業出身の佐々木 信吾コーチが2008年に赴任し、厳しい練習を積み重ねてレベルアップしてきた。そしてこの夏、県立能代工業を破って初めて全国への扉を開いたのだ。
しかしそのインターハイは、安城学園(愛知)に敗れて“全国初勝利”とはならなかった。だからこそ県立平成は、秋田県内で勝つだけにとどまらず、全国初勝利、そしてその先へ――そんな思いでウインターカップに乗り込んできた。
迎えた男子1回戦、初戦の相手となった長崎・県立佐世保工業も、奇しくもウインターカップ初出場。その県立佐世保工業は、夏の県予選(vs 長崎西)で39点差の大敗を喫しながら、冬にかけて急成長を遂げ、悲願の全国出場を勝ち取ったチームだ。そんな両チームの“全国初勝利”を懸けた戦いを見守ろうと、Dコートのあるサブアリーナには入場制限がかかるほど多くの応援団とバスケットボールファンが詰めかけた。
両チームともに、小柄だがディフェンスからの速攻が持ち味。それゆえ予想に違わず、試合は目にも止まらぬ走り合いとなった。前半を終えた時点で、県立平成が48点、県立佐世保工業が47点と、ハイスコアがその表れだ。そのまま第3ピリオドになっても全く点差が離れず、県立平成が2点リードして入った最終ピリオドも白熱したシーソーゲームに。激しいぶつかり合いが続き、第4ピリオド残り5分には県立佐世保工業M立石 宝龍選手が、残り3分半には県立平成C三浦 杏太選手がそれぞれ退場するほどだった。
勝負の分かれ目となったのは、試合の最終盤。残り1分、必死にリバウンドを弾き、ルーズボールに飛び込んだ県立平成がマイボールにすると、このスローインからゴール下に飛び込んだG内藤 達也選手が得点して2点先行。逆に県立佐世保工業は、焦りも見えてターンオーバーを犯し、そのまま85−83で試合終了となった。
試合後、敗れた県立佐世保工業の水戸 義久コーチが「選手たちは全力でよく頑張ってくれました。最後は、自分に運がなかったのかもしれません…」と言うほど、最後の最後までどちらに勝負が転ぶか分からない試合だった。
シックススマンながら、この試合で12得点を挙げた県立平成のG内藤 達也選手は言う。
「自分はシックススマンという役割に誇りを持って、試合の流れを変えようと意識していました。リバウンドとルーズボールは毎日徹底してきた部分で、今日も前半はなかなか取り切れませんでしたが、最後の大事な場面で全員ボールに飛び込めたことが、勝ちに結びついたと思います」
実際、リバウンド数では県立佐世保工業の35本に対し、県立平成は50本。終始大接戦で、最終的にたった2点差で明暗が分かれた試合だったが、このボールに対する執着心こそが、勝利の女神を微笑ませたのかもしれない。日頃の練習の成果を発揮した末の、嬉しい全国初勝利となった。
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平成が新たな歴史を作っていくのか、能代工業が復活するのか、来年以降に注目です。