引き継がれる姉の思い-イマケン

  • 2015年12月29日(火)

また、ウインターカップです。
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最初から最後までお互いがともに意識していた。

お姉ちゃんに勝ちたい。

最後の大会で妹に負けるわけにはいかない。

果たしてその結果は――

女子準決勝、大会4連覇を目指す愛知・桜花学園と、昨年のファイナリスト、千葉・昭和学院の一戦は、桜花学園が64-58で勝ち、決勝戦進出を決めた。

桜花学園の1年生ガードM山本 麻衣選手が言う。「別の高校に進学を決めたときから、1年生でスタメンの座を取って、ライバル校にいるお姉ちゃんと戦いたかった」
ライバル校にいる姉とは昭和学院H山本 加奈子選手である。

そんな2人が国体に続き、ウインターカップ2015の準決勝でもマッチアップすることになった。

姉・加奈子選手は試合後、「絶対に勝とうと思っていました。でも自分がムキになりすぎてしまった……もう少しチームで戦えばよかった」と、涙を浮かべる。加奈子選手が高校進学とともに千葉に移り住むまで、2人はずっと一緒だった。

姉妹としてケンカをすることもあったが、それはどこの家庭の、どの姉妹にもある光景だ。しかし、だからこそわかることがある。
「(麻衣選手は)崩れるときには崩れる。プレッシャーをかけていこう」加奈子選手はそうしてゲームに臨んだという。

第1ピリオド、桜花学園の最初の攻撃から2人はマッチアップをする。麻衣選手は加奈子選手のディフェンスのプレッシャーを「すごい」と感じていた。しかし桜花学園で1年生のときからスタメンの座に座れる選手は決して多くない。そんな稀有な一人としての責任も、1年生ながらある。
「お姉ちゃんのプレッシャーは強くてシュートが入らなかったけど、だったらファウルをもらうつもりで積極的にドライブをしていこう」
麻衣選手はゲームの中で強気な戦い方に出たという。それが結果としてチームにいい流れを生む。

そしてゲーム最終盤、一旦は2点差まで詰められた桜花学園が、再び6点リードした場面で麻衣選手がバスケットカウントを決める。ファウルをしたのは加奈子選手。しかもそのファウルで加奈子選手はファウルアウトとなる。

麻衣選手が言う。「そこにお姉ちゃんがいたことはわかっていました。でも勝つためにはファウルされても……たとえお姉ちゃんがファウルアウトになっても、決めなきゃって思っていました」
勝利の女神は、冷静に状況を見ながら、姉を超えようとした妹に軍配を上げたわけだ。

歴史学者の網野 善彦氏の言葉に「負けた人間にしかわからないことのほうが、人間にとって大切なことがあるのではないか」というものがある。

妹は勝負に勝ったが、姉は負けたことでまたひとつ人間として一回り大きくなれる。

最後に姉・加奈子が妹・麻衣について語ってくれたことが、それを物語る。
「3年生が中心の桜花学園で1年生からスタメンに入って、しかもポイントガードとしてしっかり声を出しているし、思い切りプレイしている。決勝戦も頑張ってほしい」
姉のエールに妹はどう応えるか。託された「優勝への思い」引き継いで、麻衣選手は明日の決勝戦に臨む。