熊本国府の2回目です。もちろん、公式HPから。
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情熱はそう簡単に奪われるものではないらしい。むしろ加速したようにも見える。
「JX-ENEOSウインターカップ2015」は2日目、女子2回戦、千葉・昭和学院に60-78で敗れた熊本・熊本国府の吉村 明コーチである。
高校バスケットボールファンであれば、中村学園女子を率いて、近年でいえば第36回大会、第37回大会を連覇したコーチと言えば思いつくだろうか。
第43回大会に中村学園女子のアシスタントコーチとして出場して以来となるウインターカップは、率いるチームを変えながらも、随所に“吉村バスケット”を見せていた。
昭和学院戦を終え、ゲームを振り返った吉村コーチは「ゲームスタート時の差が出ました。あそこでもう少しリラックスできていたら、あとは互角の展開だったから」と悔やむ。
途中で敷いたゾーンディフェンスも、プレスディフェンスもまだまだ選手たちには理解されておらず、うまく機能しなかった。
熊本国府を率いて3年になるが、まだまだ浸透するまでには至っていない。
むろんそれが簡単でないことは吉村コーチ自身もわかっている。
「試合の流れ、1本の大切さなどを理解するには、今の1年生が3年生になったころになるだろう」。
それでも「マイナスからのスタート」(吉村コーチ)から3年でウインターカップの2回戦まで来られたことは、選手たちに頑張りによるとベテランコーチも目を細める。
「本当はね、今年でやめるつもりだったんだ。今の3年生が1年生だったときに強化を始めたから」
当初は熊本国府からのオファーも断り続けていたそうだが、三顧の礼で迎えられると、彼自身のなかにスイッチが入った。
よし3年頑張って、彼女たちを全国に連れていこう。
「でも今春いい1年生が入ってきたでしょ。別にスカウトしたわけじゃないんだけど、M橋口 樹はお姉ちゃん(D橋口 華菜)がいたこともあって入ってきて、辞められなくなっちゃったんだ。責任があるからね」
そう言って苦笑にも似た表情を見せるが、決して不満に思っている様子はない。それはそうだろう。橋口は今年度の女子U-16日本代表だし、L川端 日菜子は橋口とともに福岡・北九州市立折尾中学校で昨年度の「全国中学校バスケットボール大会(全中)」を制している主力メンバーでもある。
「熊本は井の中の蛙というか、全国大会に出てもなかなか上位に進まないでしょう?だからレベルアップを図って、全国で戦えるチームにしていきたいですね。バスケットボールという競技の深さ、広さ……それらを追求すればきりがないけど、それでも留学生などが増えてきた今、速さや幅のあるバスケットを求めていきますよ」
少しずつ成長している熊本国府だが、成長を求めるのは未熟な証拠でもある。
しかし成長のあとには“実り”の時期がやってくる。
ベテランコーチが若い選手たちをどこまで実らせるのか――挑戦はまだ始まったばかり