ウインターカップ転載5-イマケン

  • 2017年12月29日(金)

もうひとつ。
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理屈を凌駕した3年生の意地


この試合は、きっと後世にも語り継がれていくに違いない。安城学園(愛知)と大阪桐蔭(大阪)の女子決勝戦は、それほどまでに壮絶なゲームとなった。

準々決勝で第1シードの岐阜女子を下した安城学園と、準決勝で第2シードの桜花学園を下した大阪桐蔭。それぞれ夏の結果から見れば、今大会では格上の相手を倒し、勢いに乗って初めての決勝の舞台へと足を踏み入れた。

試合は互角の立ち上がりだったが、徐々にペースを掴んだのは安城学園。特に、準決勝まで平均29得点以上を稼いでいた大阪桐蔭のエースN竹原 レイラ選手を、ボックスワンやゾーンプレス、マンツーマンディフェンスを駆使してよく抑え、「前半、(竹原選手を)3得点に抑えることができたのは上出来。ディフェンスは上手くいっていました」と、安城学園の金子 寛治コーチも振り返る。

オフェンスでもG千葉 暁絵選手やL野口 さくら選手が大阪桐蔭のゾーンディフェンスを崩しながら得点を重ね、55-45と安城学園の10点リードで第3ピリオドを終えた。

しかし第4ピリオド、ここから大阪桐蔭が息を吹き返す。F小田垣 李奈選手のバスケットカウントを皮切りに、E鈴木 妃乃選手の3Pシュートなどで追いつき、66-66でオーバータイムに突入した。

その延長戦も、互いに3Pシュートを決め合う白熱した展開が続き、残り15秒で大阪桐蔭のキャプテンC永田選手が逆転3Pシュートを決めたが、最後はこぼれ球から安城学園I深津 彩生選手が冷静にゴール下シュートを決め、ダブルオーバータイムへともつれることに。

すると、この再々延長、残り2分半で大阪桐蔭は大黒柱の竹原選手が5ファウルで退場。このフリースローを安城学園の千葉選手がきっちり2本沈め、4点リードに成功した。

だが、またしても大阪桐蔭は鈴木選手の3Pシュートや永井選手のオフェンスリバウンドで粘って同点に追いつき、残り6秒、ドライブを仕掛けた鈴木選手に、安城学園のディフェンスが一斉に寄ったところで、鈴木選手からパスが渡ってQ小林 明生選手が得点。

一方の安城学園は、最後のオフェンスを2年生エースの野口選手に託すも、攻め切れなかった。86-84で、大阪桐蔭が50分間の再々延長に及んだ激闘の終止符を打った。

試合後、「第3ピリオドの途中で10点以上はリードしていたんですよね。なんで追いつかれたのか……帰ってビデオを見直さないと」と、金子コーチはやや放心状態。

確かに、安城学園の策は確実に大阪桐蔭を苦しめていた。特に、エースの竹原選手が徹底して守られ、最後まで調子が上がらなかったことに関して「インターハイの岐阜女子戦を思い出し、本当に嫌な雰囲気でした」と大阪桐蔭・森田 久鶴コーチも振り返る。

それでも、大阪桐蔭が驚異の粘りを見せて勝利を掴み取った要因は、セオリーや理屈を凌駕したところにあったのかもしれない。

「気持ちを出して、自分を信じてシュートを打ちました」という鈴木選手をはじめ、たとえシュートセレクションが悪くともアウトサイドのシュートを決め続け、身を呈してリバウンドに飛び込んだ3年生たちの意地は見事だった。

大阪桐蔭の今年の3年生たちは、エースの竹原選手を筆頭に、下級生の頃から試合経験を積み、多くの敗戦を味わってきた学年。いよいよ迎えた勝負の年に、集大成となるこの舞台で、これまでの悔しい経験や努力が花開く形となったのだ。

「鈴木をはじめ、永井のドライブだとか、小田垣のドライブ、大事なところでの永田の3Pシュート…今まで竹原を支えてくれた、周りの3年生の力だったかなと思います。本当にこの初優勝は、チーム全体で勝ち取った勝利です」と、森田コーチは笑顔で選手たちを称えていた。
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ダブル延長戦。確かに歴史に残る試合でしょう。