ウインターカップ現地レポートから(8)-イマケン

  • 2016年12月27日(火)

今回、「オールラウンド」という、言葉がひっかかりました。

その事例をふたつご紹介します。

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「ある名将のラストクリスマス」

ウインターカップのみならず、高校バスケットボール界を沸かした名将が、2016年のクリスマスを最後にその舞台から静かに降りる

来年3月に定年を迎える女子の山形市立商業の高橋 仁コーチにとって、JX-ENEOSウインターカップ2016はコーチとして最後の全国大会だった。

1回戦、2回戦を突破し、迎えた3回戦の相手は、これまでお世話になってきた井上 眞一コーチ率いる桜花学園。言わずと知れた高校女子バスケットボール界をリードする高校だ。

今年で就任28年目を迎える高橋コーチだが、それ以前は中学校の教師をしていた。当初は男子バスケットボール部を率いていたが、その後、女子バスケットボール部の顧問になったときに「日本一のチームとはどういうチームなのだろう!?」と、井上 眞一コーチに手紙を送り、1週間寝泊りをさせてもらいながら、その神髄を学んだという。

「その井上さんと最後のゲームになったのは何かの縁かな。井上さんからはたくさんのことを学びましたよ。特にディフェンスの厳しさや、ファンダメンタルの大切さ、そして厳しい練習の中で選手が自立するチーム作り。井上さんは指導者として大きな影響を与えてくれた人です」

そこから愛知学泉大学の木村 功コーチを紹介され、当時の共同石油(現:JX-ENEOSサンフラワーズ)を指揮していた中村 和雄氏、長崎・鶴鳴女子(現・鶴鳴学園長崎女子)の山崎 純男コーチなど、あらゆるカテゴリーの日本一のコーチたちと交わり、バスケットボールのコーチングを深めていった。

それでもすぐに結果が出たわけではない。むしろ高校バスケットボール界で山形市立商業の名前が出始めたのは、ここ10年くらいである。
それは周囲から「山形市立商業には独自の色がない」と言われたことがきっかけだった。それまで井上コーチをはじめ、日本一を知るコーチの真似をしていた高橋コーチだったが、ふと立ち止まり、考えた。どうすれば山形県にいる子どもたちに合ったバスケットボールができるのだろうか、と。辿りついたのが、170cmから180cmに満たない選手たちをオールラウンドにプレイさせる、現在の山形市立商業のバスケットの根幹となるスタイルだ。

果たして、大沼 美咲さん(元デンソーアイリス)を中心としたチームで第38回大会(2007年)、第39回大会(2008年)の銅メダルを獲得すると、第42回大会(2011年)には妹の大沼 美琴選手(現:JX-ENEOSサンフラワーズ)を擁したチームでの準優勝へと結実する。

さらに活躍は山形市立商業だけに留まらず、今年度は女子U-18日本代表チームのヘッドコーチとして、11月のFIBA ASIA U-18選手権でチームを準優勝に導いた。

(中略)

日本一にはなれなかったが、チームディフェンスで桜花学園の攻撃を狂わせ、オフェンスでは175cmのE小鷹 実春選手が3Pシュートを決めるなど、オールラウンドにプレイする山形市立商業のバスケットスタイルは、間違いなく多くのファンの心に残り、日本中の多くの指導者が参考にできるところだろう。
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「陸上部には負けていられない」

女子3回戦が行われた12月25日(日)、つまり大阪薫英女学院(大阪)がウインターカップ2016のベスト8進出を決めたその日に、同校の陸上部が都大路を駆け抜け、全国高校駅伝を制した。2年ぶり2度目の栄冠である。折しもバスケット部も全国大会の真っ最中。同じ運動部としては刺激を受けないわけがない。キャプテンのC金田 愛奈選手が言う。
「陸上部の子たちとは3年間同じクラスだったんです。だから優勝を聞いたときはすごいなと思ったし、同じ学校のクラスメイトとして嬉しい反面、運動部で競い合っている立場でいえば、自分たちも負けていられないなって思いました」

だがバスケットボール部が同じように全国制覇を果たすためには、越えなければならない大きな壁がある。高校総体、国体を制し、「高校3冠」に王手をかけている女王・桜花学園だ。16年ぶりの決勝進出をかけて戦う、準決勝の対戦相手である。

結論から言えば、大阪薫英女学院は57-81で敗れ、その壁を越えられなかった。
「前半がすべてでしたね」と安藤 香織コーチが言うように、序盤から桜花学園のディフェンスに押し上げられ、練習してきたことができない。むしろ「国民体育大会が終わった後、しっかりと走りきってからボールを受ける練習をしていたのに、みんながボールへ、ボールへと意識して動いていたので、余計に桜花学園はディナイがしやすかった」とC金田選手が振り返るように、ボールが動かず、人も動かず、得点を積み上げられない。前半を終えた時点での23点ビハインドは、桜花学園を相手にすると致命的でもあった。

しかし後半、スタメンの平均身長が170cmを超えるオールラウンダー集団は開き直った。攻守においてアグレッシブさを取り戻し、最大25点まで開いた得点差を13点差に縮める場面もあったが、最後は桜花学園に押し切られてしまった。

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熊本では長身でも全国には通用しない。長身でもオールラウンダーにならなければならない!